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【2025/03/10 23:30 】 |
未払いの残業代請求
このブログでは、時間外労働についての裁判例を紹介しています(つづき)。

二 時間外労働(残業)について
1 時間外割増賃金(残業代)の計算基礎
 業務手当及び加算手当が労基法37条4項,同法施行規則21条規定の時間外割増賃金(残業代)の基礎となる賃金から除外される賃金に該当するかどうかについて検討する。
 労基法37条4項,同法施行規則21条は,時間外割増賃金(残業代)の基礎となる賃金から除外される賃金を規定しているところ,これらの賃金が除外される趣旨は,例えば「家族手当」,「住宅手当」などであれば,同一時間の時間外労働(残業)に対する割増賃金(残業代)額が労働の内容や量とは無関係な労働者の個人的事情で代わるのは相当でないとの理由で除外されたものであり,「臨時に支払われた賃金」であれば,労基法37条3項に規定する「通常の労働時間の賃金」とはいえないことから除外されている。これを踏まえて以下に検討する。
 まず,業務手当であるが,業務手当は,被告の主張する給与規定(〈証拠略〉)上基準内賃金とされていること(前記一2(一)),業務手当はもともと困難な乗務とされる石油タンクローリー車とコークス用ダンプ車の乗務日数に応じて支給されていたとしても,実際には運転手全員が恒常的に乗務していたため一律に加算された手当であったこと(前記一2(三))からすると,業務手当は,通常の業務の中に恒常的に含まれる困難な業務の対価として支給されてきた手当であって,被告の考えていたように便宜的,恩恵的ということはできず,まさに「通常の労働時間の賃金」であるといえ,時間外割増賃金(残業代)の基礎から除外される賃金には該当しないというべきである。
 次に,加算手当であるが,加算手当には深夜労働(残業)手当分が含まれていることから時間外割増賃金(残業代)の計算の基礎から除外すべきと考える余地もなくはない。しかし,加算手当には,深夜労働(残業)手当分のみならず,運転手が通常の業務としてする乗務の回転数,配送件数,長距離運転等に応じて加算されるポイント制で支給される分も含まれており,右については時間外割増賃金(残業代)の計算の基礎から除外される賃金のいずれにも該当しない。したがって、本来は深夜労働(残業)手当分とポイントによる分は分離し,後者のみ時間外割増賃金(残業代)の計算の基礎とすべきであり,東部労組エスエイロジテム支部も両者を分離すべきとの見解であったにもかかわらず,被告はこれを分離しなかったことからすると(前記一2(三),3),加算手当を時間外割増賃金(残業代)の計算基礎から除外して労働者に不利益を与えるべきではない。
 したがって,業務手当及び加算手当のいずれについても時間外割増賃金(残業代)の計算の基礎とすべきである。 
2 時間外労働(残業)時間
 原告らは,時間外労働(残業)時間について,平成9年3月分までは,被告が各原告らの給与支給明細書に残業時間として記載されたものを主張する。具体的には,被告は当時月間の所定労働時間を191.33時間としていた(前記一2(二))を超える部分である。また,平成9年4月分以降は労基法が週40時間と変更されたのに伴い,月間の総労働時間について174.48時間として,それを超える部分を時間外労働(残業)として主張している。平成9年4月分以降について,被告は従前と同様月間の所定労働時間を191.33時間としていたため(前記一2(二)。なお,証人明石勝巳は,右と異なる証言をするが,右証言を裏付ける証拠はなく,むしろ〈証拠略〉に照らして採用できない。),原告ら主張の時間外労働(残業)時間と被告が各原告らの給与明細書に記載した残業時間とは一致しない。
 被告は,その当否について,原告らが労基法上の規定された1日8時間,週44時間ないし40時間を超える労働を行ったとの主張をせず,労働契約上の月間の所定労働時間合計を超えた分を主張,立証するのみであるから,主張自体失当,立証不十分であり,直ちに棄却されるべきであると主張する。確かに,厳密には1日8時間,週40時間ないし週44時間を超える時間外労働(残業)時間の合計と単純に月間の総労働時間から算出した時間外労働(残業)時間とは必ずしも一致するものではない。
 しかし,本件においては,週44時間制の下での月間所定労働時間191.33時間,週40時間制の下での月間所定労働時間174.48時間はいずれも,労基法上の労働時間を超えていること(週44時間制の下では年間法定総労働時間は191.19時間(365日÷7日×44時間÷12月),週40時間制の下では年間法定総労働時間は173.81時間(365日÷7日×40時間÷12月)となる。),被告における勤務は原則として午前7時から休憩時間1時間,実働8時間とされているが,加えて勤務は早朝から開始されたり深夜に及ぶことがあること(〈人証略〉)からすると,原告らの主張する時間外労働(残業)時間が1日8時間,週40時間ないし週44時間を超える時間外労働(残業)時間であったことを推認することができるのであって,右認定を覆すに足りる証拠はない。
3 原告らの未払時間外割増賃金(残業代)
 右1,2によれば,原告らの時間外労働(残業)時間は別表二の1ないし5の各割増賃金(残業代)計算表「時間外労働(残業)時間」欄のとおりとなり,各原告らの賃金(〈証拠略〉)から原告らの時間外割増賃金(残業代)の計算基礎となる時間単価は別表一の1ないし5の各計算基礎賃金表「時間単価」欄のとおりとなり,未払時間外割増賃金(残業代)は別表二の1ないし5の各割増賃金(残業代)計算表「未払賃金」欄のとおりとなり,その合計額は次のとおりとなる。
原告 長谷川隆一 63万7416円
同  今井明   51万3307円
同  菅谷光哉 113万2539円
同  浜辺良信 111万6976円
同  山田進   66万5094円

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【2011/03/13 22:52 】 | 残業代の請求2
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